KYOTOGRAPHIE 2019
presented by Bang & Olufsen
Soundscape + Photography Installation
Slide Projector, Video Projector, Soundtrack(4.0ch, 24bit/96kHz, 22mins)
《Wind Eye 1968》によせて
1968年、祖母は医師であった夫の視察旅行に同行し、最初で最後の海外旅行に出か けた。パリ、ベルリン、ローマ、コペンハーゲン、モスクワ、ジュネーブ、ニュー ヨーク、ハワイなどを巡る世界旅行であった。
私が幼い頃、各地で撮影したフィルムをリビングの壁に映写機で投影して見せてく れたのを憶えている。私にとって、それが初めて身近に感じた「世界の色」であっ た。旅の音はなく、映写機のフィルムを切り替えるときのカシャという音だけがあ った。
その後、93歳で亡くなるまで、祖母が写真を撮影しているところは一度も見たこと はない。この旅行についてはあまり話を聞くことはなかった。 祖母は生前私が音楽家として活動することを知ることはなかったが、今ここで2つの 旅の映像と音が交わる。
1968年の世界を限られた小窓から垣間見るように、わずかにこぼれ落ちた数滴の水 のしずくを手にとるように、その中の世界を想像してみる。 旅先で音を集め音楽を作っている私と、祖母の旅の記録。回顧的な気持ちではなく、1968年の写真と2019年の音とを重ねてみたい。
写真: 原 悦子(1912-2005)
音楽: 原 摩利彦
アドバイザー: 原 瑠璃彦